ピアノ教室でソルフェージュを習う意味

以前にも、お話ししましたが、東京都には約115,000人もの音楽の習い事(民間の教室で)をする方がいらっしゃいます。

その中には幼児~大人・趣味~受験など様々な目的を持って教室に通われ、子供に自立心や自尊心をつけさせるためとして、または専門家を目指し高等教育を受ける方までいらっしゃいます。

そういった中にあって、ソルフェージュはどういった役割を担うのでしょうか?

ピアノや作曲を習うだけでは、不十分なのでしょうか?

そもそもソルフェージュ(solfège)は、楽譜を読むために発展した学問で、いわば「音楽の基礎能力」と言えます。

今、仮に、ここにクレッシェンド(次第に強く)という表記があったとしましよう。

一般的に音が登っていけば、自然にクレッシェンドがかかります。これは演奏上、生理的で自然な反応です。

しかし、音が登るに従って、クレッデェンドの反対(デクレッシェンド)が表記されていたらどうでしょうか。演奏者は、無意識にですが、一瞬困惑します。なぜなら、これは、明らからに生理的感覚に矛盾するからです。
しかし、このような表記を意図的に行い、演奏者も意図的に演奏すると、これは「まるで音が天高く遠のいていく」ような独特の表現を出すことができます。

こいった違いと多様性を学び、様々な表現方式を学ぶのがソルフェージュと呼ばれるものの真の目的です。

ソルフェージュというと、ドレミで正しく音程を取って歌唱したり、音を聞いて書き取るといった訓練がクローズアップされがちですが、それは上に述べたような目的への手段に過ぎないのです。

ところで、音楽というのは、どの音楽も異国・異文化の表象です。

私たち日本人は、チベット密教の声明(しょうみょう)と呼ばれる誦経(一種の声楽)を、おどろおどろしく恐ろしいものと感じます。

また、アフリカ原住民の葬式の音楽を、楽しげな音楽と聞き間違えることもあります。

ソルフェージュのもう一つの側面は、西洋音楽の表象を体系的に学ぶことであり、西洋音楽をより高次元に持って行こうとするものです。

そのため、ピアノ教室での習い事や、作曲の習い事では、やはり欠かせない勉強と言って良いでしょうし、まさにそれが音大入試の必須科目になっている所以でもあるのです。

ソルフェージュというと、主科の付随科目のように一見思われがちですが、その実は、非常に奥深いものなのです。そして、ソルフェージュは、誰でも、いつからでも、習い始めることができます。

本格的に音楽を習いたい方にとって、ソルフェージュは、極めておすすめの勉強と言えます。(美ゞ音楽教室)