アラベスク(分析とピアノ奏法)・ドビュッシー『2つのアラベスク』より第1番

今日のテーマは、前回に引き続き「アラベスク」です。
といっても、前回のブルクミュラーからは歴史的にも地理的にも遠い、ドビュッシー作曲・ピアノのための『2つのアラベスク』を取り上げます。
この記事では、1つ目のアラベスク(第1番)に絞ってお話をしていきましょう。

本作は非常に有名ですので、ピアノレッスンをなさっている方なら、一度は弾いてみたいと思ったことのある曲ではないでしょうか?

また、ピアノ教室などで、音高受験や音大受験を考えている方なら、小学校中学年~高学年くらいで、一度は弾いたことがある生徒さんもいると思います。

  • 演奏から聞こえる作曲技法

まず楽譜を片手に、優れたピアニストの演奏を聞いてみて下さい。

冒頭の1ページを聞いただけで、この音楽が絶え間ない情報発信力を持ち、イノセントで豊かな情感にあふれていることが分かります。

作曲過程で四苦八苦した痕跡が見られず、各音が無駄なくスマートにハマっている。
若干26歳のドビュッシー。
すでに歴史的作曲家の鱗片が見られます。

  • アラベスクの分析とピアノ奏法

さて、「アラベスク」の分析とピアノ奏法の解説に入ります。
まずは作品の概略から。本作は、

A[38]-B[32]-A[37]

の複合3部形式で、合計107小節([  ]内は小節数)。
E dur、4/4拍子、Andante con motoの動きが音楽の主体になっています。
明確な再現部A[37]を持ち、書法や和声面では、フォーレの影響が強く見られます。

1部(138小節目)

この音楽、冒頭2小節間の特徴は次の4点です。

  1. E durのⅣ度から導入される
  2. 和声進行は弱進行である(根音が順次下行する
  3. それが6の和音形態(第1転回形)である
  4. またそれがアルペジオの形をとっている

これら4点いずれもが、その後の音楽を形作っていく重要な要素になります。
特に順次下行するというのは、この作品を下支えする構造になります。

旋律がソプラノ声部に出てくる3小節目からも、バスが順次下行をし、5小節目でⅤ度(属和音)にたどり着きます。そして、6小節目でⅠ度(主和音)が明確に表されます。
演奏上は、この一連の流れを捉えることが重要です。また、6小節目の主和音がppによって、文脈の終着点・新たなフレーズの開始点に置かれていることに注意する必要があります。

6〜9小節目まではバスのmi音が支配的です。
右手は非和声音(刺繍音)を連続使用・間接使用することで結果的にペンタトニックを形成しています。
ここは、とても興味深い点です。

10小節目の右手に表される「シラシド」の音型を今、仮にXとします。これは後ほど出てきますので覚えておいて下さい。
ここからはバスが順次上行し、ドッペルドミナントまで到達します。

17小節目からは、冒頭の繰り返しになりますが、順次下行に始まる旋律がソプラノ声部に表されます。
ここからは旋律と伴奏という、はっきりとした住み分けがありますが、旋律線を意識した細かなrit/a tempoのテンポ指示は特徴的です。
9小節目からここまでは、演奏上、右手と左手の役割配分を確認すること、音域の上がり下がりと強弱、テンポ指示に注意する必要がありそうです。

26小節目からは、音楽はやや静的になります。
続く34小節目から4小節間は、cresc./dim.を行なっていますので、演奏上、計画的な音楽作りが必要です。
37小節目の最高音をあえてpで記しているのは、当時の流行もありますが、ドビュッシー特有のナイーブな表現といってよいでしょう。
ピアノ演奏でも、ここは姿勢やタッチを工夫して、デリケートな音色がぜひ欲しいところです。

2部(39小節目のTempo rubato70小節目)

2部はA Durに転調します。
しかし、Ⅱ度から導入されるため、調性感は46小節目まではっきりとしません。
さて、第1部で表されたXを思い出して下さい。39小節目冒頭の旋律として、1拍目が4度上に移調して使用されています。

Xを主体とした音楽は46小節目でE durの終止形を迎えた後、mossoで気分を変え、2小節間の同型反復を経てfに持っていきます。これをもう一度繰り返した直後a TempoかつpXが表されますが、この時のXに対する背景和音は大幅に変化しています。(55小節目)
この背景和音の変化は重要で、Xの弾き方も変化してきます。ここも演奏上のポイントになります。

67小節目からは再現部の準備にあてられますが、ここにもXの断片が置かれ、ストレッタ風に書かれています。(ただしストレッタにcresc.は伴いません)

第2部は、前半が39小節目〜54小節目の16小節間、後半が55小節目〜70小節目の16小節間となっていて、その内容はa[8]-b[8]-a[8]-c[8]の綺麗な2部構成になっています。

再現部(71小節目のTempo 102小節目)

再現部は88小節目までは、冒頭とほぼ同じです。
89小節目からはバスを追っていくとドから順次下行していき、95小節目でE durのⅡ7の和音、97小節目でⅢの和音をはさみ98小節目でⅤ7、99小節目で完全終止のⅠとなります。

以降は、冒頭のペンタトニックを回想するような楽節を置き、103小節目からややコーダ的楽想を残して曲の終止を迎えます。

いかがでしたか?

今日は、ドビュッシーの「アラベスク」(第1番)の楽曲分析と、ピアノ演奏法についてお話をしました。
これから習い事でピアノを始めようといった方も、どうぞご参考になさってください。(宮川慎一郎)

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