コンクールでは選曲も重要

先日、あるコンクール審査に行ってきました。私が審査したのはピアノなどを含む室内楽やアンサンブルの部門でした。このコンクールでは、自由曲制を採用しており、各々の曲で臨む各団体はどれも甲乙つけがたい素晴らしい演奏でした。

その中で少し気になったのは、選曲、つまり曲選びです。どんな作曲家を選ぶかということでもあります。

実のところ、全く異なる年代の演奏者の方達を、自由曲で審査することは、審査員にとってはとても困難なことです。しかし、その中にあって、演奏者の選曲・作曲家選びは審査基準のポイントの一つになると私は思っています。

まず、歴史的作曲家の曲に挑む演奏者は、その曲の演奏史がある点で、ごまかしが利きません。その意味で、歴史的作曲家にチャレンジした演奏者は、それだけで勇気があり、審査員の心証も私からすると良いものでした。

次の観点は、演奏者と曲の相性です。ただ好き・嫌いで選曲をするのではなく、その演奏者の特技が最も披露できる選曲が重要です。

最後の観点は、やはりコンクールですので、テクニックを見せられる選曲が大切です。コンサートでは緩徐楽章的な選曲で聴衆を魅了することも大変重要ですが、コンクールの審査員は演奏者のテクニカルな面に目を向けがちなので、テクニック的にも難易度が高く、形式的にも様式的にも複雑な曲をどのように演奏するかが私は重要と思っています。(宮川慎一郎)