和声と作曲は何が違う?(子供のピアノ曲を題材に考えます)

今日のテーマは和声と作曲がどう違うかという問題です。
以前にも同じテーマで記事を書きましたが、今日は具体例から、しかも子供のためのピアノ曲という分かりやすい素材をもとに説明していきます。

私が選んだ素材は、ツェルニー100番練習曲。その中の『8番』。
ツェルニー(Carl Czerny 1781-1857)は、ピアノ教室に通って間もない初心者の方や、ピアノを習ってみたいという方なら耳にしたことのある作曲家だと思います。
ベートーヴェンの弟子、リストの師匠にあたる音楽史上とても重要な人物です。

さて、和声と作曲の違いについて語るには、その両者をそれぞれ定義付けた上で比較しなければなりません。
和声とは「これこれ、こういうものです」、作曲とは「あれあれ、ああいうものです」、ほら違うでしょと言った手順です。

ツェルニー100番の『8番』。
早速ですが1小節目を見てみましょう。

左手は1拍目にド、2拍目にミ、3拍目にソが置かれています。一方の右手は1拍目に付点四分音符のミ、2拍目裏にレ、3拍目にドが置かれています。この小節を和声分析すると、ハ長調のⅠ度と考えることができます。

まず、なぜハ長調と分かるのか。この曲には調号が付いていないこと、そして、1小節目を含む冒頭8小節間にハ長調のカデンツがあるためです。
そしてⅠ度と考えた場合、左手ドミソは分散和音と考えられ、右手のレは経過音と考えられます。

つまり、和声とは調における役割を持った和音の事なのです。

一方の作曲とは何か。
これは、すでに説明してしまっている部分もありますが、Ⅰ度という和音を左手で分散させたり、右手で付点リズムを付けたりする事です。
もっというと、この曲を3/4拍子にした事も作曲、Allegretto con moto.というテンポにした事も作曲、ピアノの中音域を使った事も作曲。
あとは1小節目だけでは解説し切れませんでしたが、随所に三度およびその転回音程のメロディ+伴奏という書法をとった事も作曲、そして重要なのは複合2部形式という64小節間(繰り返しを含む)の持続を作った事が作曲なのです。

つまり、作曲とは複数の秩序を伴った「音」の持続を作る事なのです。

ここで今日のテーマをまとめましょう。

和声と作曲の違いは一体何でしょうか?

もうお気付きかもしれませんが、実は、作曲の定義の中に「音」という言葉が含まれています。

つまり、和声は作曲の一要素なのです。

これを数学記号で表すなら「和声⊂作曲」という集合の考え方になります。

質問者の意図や文脈によりますが、「和声と作曲の違いは?」という問いは、本質的なレベルで答えると、そもそも的外れということになってしまうのです。

いかがでしたか。
今日は和声と作曲について、その第2弾のお話でした。

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