音大入試直前!モチーフ作曲課題(ピアノ曲)の対策

今日の記事は、音高・音大の作曲科受験を目前にした皆さんに向けたものです。
一般の方用ではありませんので悪しからず。

ここからは、モチーフ作曲課題の対策について書いていきます。
試験直前の1〜2ヶ月で、何をどのように取り組んだら良いか、私たちの音楽教室で実践しているレッスン方法を交えて解説していきます。

モチーフ作曲課題は、指定楽器や形式が決められている場合と、任意(自由)の場合があります。しかし全てのケースを解説するスペースがないので、今回は皆さんが取り組むケースが一番多い「ピアノ曲で3部形式(または複合3部形式)」の場合に限りお話します。

  • まずは形式について。

これは3部形式に限ったことではありませんが、モチーフ作曲の要はモチーフの特徴をしっかりと分析的につかみ、モチーフを適切に扱えているかどうかです。

モチーフの特徴を分析的につかむというのは何か。
具体的には、モチーフの調性や拍子、多用されているリズムをチェックすることです。さらに旋律音程の推移、それに伴う和声的可能性を分析し、モチーフの特徴、すなわち音楽的ニュアンスを把握することです。
くれぐれも感覚や雰囲気で特徴を捉えてはいけません
試験では五線紙を1枚余計にもらって、これらをメモすると頭の整理に役立ちます。

モチーフを適切に扱うというのは何かというと、分析的につかんだことを曲の随所で、和声的な誤りをせず(意図的に誤りを作った場合は別)、楽器を効果的かつ演奏可能な範囲で使用し、説明可能なモチーフ変奏・モチーフ展開を行うということです。
3部形式の場合は、転調をする中間部の変奏(または展開)と、再現部の変奏が重要になります。

しかし、これらについては、この時期の受験生の皆さんは、ほぼ習得していると思います。

  • そこで、もう一歩踏み込んで、形式について触れましょう。

形式というのは言い換えれば、フォーマットのことです。
フォーマットとは、決まった書き方や、予め定められた一定の基準、全体的な外観を意味する言葉です。
皆さんのモチーフ作曲課題に当てはめると、次の二つのキーワードに置き換えられます。

  1. 「〇〇風」(ニューヨーク風とか、原宿風とか、あの風です)
  2. 「型」(カップケーキの型とかの型です)

の二つです。
音大入試のモチーフ作曲課題では、この二つが整っていることも大切です。

例えば、あるモチーフが出題されたとしましょう。
モーツァルト風かベートーヴェン風かの区別はつかなくても良いです。古典派風かロマン派風かくらいの大雑把な感じをつかみます。そして、古典派風なら古典派風のピアノの扱い方、ロマン派風ならロマン派風の扱い方を徹底します。
古典派もロマン派もわからなかったら、あなた風でも大丈夫です。
とにかく〇〇風を徹底することが大切です。途中で大きくブレてはいけません。

もう一つの型。
これはカップケーキを想像してもらえば分かると思いますが、作ったピアノ曲全体が整っていることが大切です。よくある失敗例は尻切れトンボ。曲の終わり間際で時間切れになってしまい、無理のある終わり方をしている例です。あとは、どこか一箇所だけ手抜きになっていないか、全体に均一に注意を注いで作曲したか、つまり型崩れを起こしてないかがとても大切です。そのためには時間配分に十分に気を配る必要があります。

言い過ぎても、言い過ぎるということは無いでしょう。
音大の作曲科入試は時間配分がとても重要です。
そのために今、皆さんがすべきは、時間をきちんと計りながら時間配分の感覚を身につけることです。

  • 最後に、試験1ヶ月前くらいまでは、ピアニズムを広げよう、というお話をします。

そもそも、受験は傾向と対策に尽きます。
そのため皆さんは受験校の過去問題をやっているかも知れませんし、その学校の先生の元で習っているかも知れません。
ただ何度も言いますが、受験は傾向と対策です。ロマン派風のモチーフが多く、その多くは強弱記号なし、テンポ表示なしで出題される学校であれば、それに応じた対策を立てれば良いだけで、必ずしも受験校の先生に習う必要はありません(当教室の合格実績をご覧ください。私の出身校とは関係のない学校に皆さん合格されています)。

仮に受験まであと2ヶ月だったとしましょう。
直前の1ヶ月は決まったことを練習通り繰り返すだけ。ソルフェージュ試験やピアノ実技の試験もあると思いますので、それらの練習と、あとは健康管理です。

では今から、その前までのあと1ヶ月で出来ることは何か。これは結構限られてきますが、ピアニズムを広げることは、直前まで比較的簡単に出来ます。
ピアニズムというのは、ピアノ独自の音形の形、指運びの形、和音の形、つまり鍵盤上の手の形についての知識です。

例えば、受験校の傾向が古典派風のモチーフだったとしましょう。
この場合、古典派のピアノ曲の楽譜を見ながら、聞いたり、弾いたりします。すると「こんな、扱い方もあるのか!」と新しい発見が必ずあります。そして、気に入った箇所があったら、五線紙に書き写しておくと良いです。

一例として、ベートーヴェンのピアノソナタ第1番のピアニズムを一緒に見てみましょう。
試験対策として使えそうな箇所を以下にピックアップします。

【ベートーヴェン作曲 ピアノソナタ第1番 へ短調】

■第1楽章
1~8小節目
=へ短調であるものの、速く軽やかで、スリムなモチーフです。そして上行型が特徴的なため前行性があります。
→このようなモチーフには、ベートーヴェンが作曲したように、休符を活用し、比較的質量の小さい物を左手に置き、組み合わせる形が合います。水彩画でいえば、筆先を使って、薄めた色を速めのタッチで描く感じです。(こういう場合、休符を有効活用すれば時間節約にもなります)

33~40小節目
=ここは前半のクライマックスです。3部形式で作曲する場合はクライマックスはA’の後半、変奏した部分で使えるでしょう。また、クライマックスの前は31~32小節目のように切迫させます。これはストレッタという技法です。
→このようなクライマックスを作る場合、両手を大きく広げて音域を広く取ります。右手は音階や分散和音を使いよく運動させ、左手は十分な厚みで支える形にします。

42~46小節目
=この箇所は、クライマックスのあと、終止を迎えるまでのあいだ緊張感を保っているところです。ここの左手は、緊迫した状況を保つ箇所に使われる、「楔(くさび)打ち」と言われる技法です。
→楔打ちの技法は、とても有効なピアニズムの一つです。多くの場合は厚い右手の旋律に対し、左手で打ち込みます。この場合の左手は、休符と厚い和音が要です。ただしこの技法の乱用は避けてください。

■第2楽章
9~11小節目
=穏やかで、簡素なメロディを持った緩徐楽章の一部分です。単一の旋律線を持つ典型的なホモフォニーで、伴奏の形はアルベルティ・バス(Alberti bass; ドメニコ・アルベルティの名が由来です)の形を含んでいます。
→このようなホモフォニーの場合、内声のアルベルティ・バスだけでも良いのですが、その下に真のバスの支えの形を作るだけで、一段と立派に(この場合は弦楽合奏風に)聞こえます。そして12小節目のようにバスが休むことがあってもよく、その場合は左手がト音記号に競り出てきます。こうすると簡素なメロディなのに聞き映えします。

50小節目
=半音階も重要なピアニズムのひとつです。忘れがちですが。
→調性を推移させたいとき、デモーニッシュな(悪魔的な)効果を出したいとき等に有効活用できます。

■第3楽章メヌエット
15~18小節目
=右手と左手が交互に音型を交代させるピアニズムです。指の奏法というよりは、腕の奏法に近く、ピアノにとっては一つの重要な形です。
→このような形は、音楽からメロディを曖昧にし、モザイク状にしたり、あるいはフォルテを扱うときにも有効です。試験に出されたモティーフによっては、使いようがない場合もありますが、知っておくと良いです。

■第4楽章
1~4小節目
=この楽章はロンド形式・急速テンポなので、左手の伴奏形パターンは少ないです。とはいえ、よく見ると、3連符を続けながらも、音域がオクターブ以上動いていることに気づきます。レジスター・コントロールという技法です。レジスターとは音域のことです。
→このような場合、つい伴奏の形をアルベルティ・バスで通そうとし、単調にしてしまいがちです。ベートーヴェンの例のようにレジスター・コントロールする方法のほか、動きを止め休符を入れる、動きを止め和音を入れる、左右の役割を交代させる、内声を入れポリフォニックにする、などのピアニズムが考えられます。

ピアノの鍵盤上の手の形、ピアニズムについて知識が広がったでしょうか?
この記事が、受験生の皆さんのお役に立てれば何よりです。

さあ、受験までもう少しです。
今が、一番の追い込み時でもあり、また迷う時でもあると思います。
困ったときには、皆さんが信頼する先生を頼ってください。
頑張れ!受験生の皆さん!(宮川慎一郎)

レッスンと料金へ

講師プロフィールへ

美ゞ音楽教室トップへ