ピアノの練習をする気が起きない時は?子供編(小学生以下)

今日のお話は、お子さんをピアノ教室に通わせている方なら、どなたでも経験のあるお話だと思います。

レッスン日を前に、一向にピアノ練習をする気のないお子さんを目にするとき、その親御さんの心は不安と焦りでいっぱいになってしまうものです。
そして、ついつい、口うるさく言ったり、練習を手取り足取り手伝ってしまいます。

そんな時、どのように立ち回るのが良いのでしょうか?

コーチングの専門家である菅原裕子さんは、著書『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)の中で、次のような興味深い問いかけをしています。

『目の前に飢えている人がいるとき、あなたはその人に魚を釣ってあげますか?それとも釣り方を教えてあげますか?』

菅原さんは、著書の中で前者(釣ってあげること)を「ヘルプ」と名付け、後者(釣り方を教えてあげること)を「サポート」と名付けました。

菅原さんは、親子関係で起こりがちな「ヘルプ」の具体例として、「子供がすべき事を親が逐一指示する」、「子供の問題を全て親が解決する」などを挙げ、これらを問題視しています。
一方の「サポート」は、子供の人生を子供に任せていくことであり、子供の自発的行動を親が待つべきであると述べています。

私は、サポートという概念は、子供の「PDCA」を、親が見守ることに似ていると思っています。
PDCA」とは、Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善を意味する用語ですが、私は、これが子供のピアノ習得にも活かせると思っています。

では、実際の子供のPDCAはどんなものでしょうか?
彼らが自分からピアノの鍵盤を触る時は、これと言った「Plan=練習計画」がないまま、「Do=弾いて」終わってしまいます。
小学校4~5年生でも、「Do=弾く」はしたものの、何となくの「Check=自己評価」だけで満足してしまうものです。
私たち大人からすると、「練習って、本当に、それで良いの?」という風に映りますね。つまり不完全なPDCAです。

ただ、待って下さい。
仮に子供に明確なPlanがなく、投げやりなDoだけで練習を終わらせてしまったとしても、一旦は、それで良しとしてあげて頂きたいのです。

そして、PlanDoの良かった点を言葉と表情で伝え(何かしら良い点はあるものです)、子供のピアノに対するプラスの感情を引き出します。
その上で、練習にはPlanを練って始めることも大切だし、時間を区切ってDoすることも大切。他にもCheckやActionてのもあるんだよ、ということを、徐々に教えていって頂きたいのです。

話は少し逸れますが、音大のピアノ専攻生でも、「Do=譜読みして音にする」と、主観的な「Action=改善」しかやらない(する習慣がない)学生がいます。
彼らは幼少期の頃から、「Plan=練習計画」も、客観的な「Check=演奏評価」も教師がずっと与え続けてくれたので、習得する必要がなかったのです。彼らは、まるで、口を大きく開けながら親鳥をひたすら待つ雛鳥のような印象があります。

少し皮肉な言い方になってしまいましたが、私はそれだけ「PDCA」の意義を子供に伝え、いかに機能的に回っているかを見守る、つまり「サポート」することが大切だと思っているのです。

さて、ここからは、それでも子供のやる気が起きない場合の対処法です。
むしろ、こちらの方に関心のある方が多いでしょうか。

子供は私たち大人が考える以上に、周囲の物事を直感的に理解しています。
「レッスンの前日なのに全然練習してない」という事態の重大さと焦りは、実は子供が一番感じています。
そしてレッスン当日に、先生に、どのように叱られるか幾つものシュミレーションを頭の中でしています。

この場合、まず親御さんは、自分の子供が練習していないことを恥じたり、自分の責任だと感じるのでは無く、子供の心情を汲み取ることから始めてみてください。
そして、「練習してないものは仕方ない。明日、先生に正直に伝えよう。それが責任というものだよ」というところまで諭せればベストですね。

実は、ピアノ講師の立場からすると、生徒さんが週にどれくらい練習してきたかは、少し聴けば分かってしまうものです。
しかし、その上で、どのように声かけし、対応するかは、生徒さんのもともとの性格やその時の関係性・状況等をよくよく考えてから言葉を発します。
少なくとも私はそうです。

しかし、いずれの場合も、子供自身と語りあい、子供自身に考えさせ、次回レッスンをどうしたいと思っているかという結論を子供自身に出させることが肝心です。
先生によってお考えは様々ですが、私は、生徒さんの自主性を信じています。私は、生徒さんの自主性を育む土壌を作っているつもりでいるからです。

子供が出した結論には、子供相応の責任が伴います。
時にそれは合っているかもしれませんし、間違っているかもしれません。
それでも、私は良いと思っています。

音楽家という職業は、楽譜に書かれた音に対して責任を負うことです。
自分の判断に責任を持つことは、その音楽家への第一歩にもなるはずです。

私たち講師や、親御さんの役目は、子供が負った責任の証人になり、時に「サポート」することであるように私には思えます。(宮川慎一郎)

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