楽語はなぜイタリア語か?

今日の音楽小噺は、楽譜の中の楽語についてです。

楽語とは音楽用語のことで、モデラート(moderato)やドルチェ(dolce)といった言葉をいいます。

ピアノを習っておられる方も、作曲を習っておられる方も、これらの楽語について、一度は何らかの疑問を持たれたことがあると思います。

まず、なぜ楽語はイタリア語が主なのか?

しかし、なぜドイツ語やフランス語も使われることがあるのか?

では、なぜ日本語は使われないのか?

などです。

これらは歴史・文化・言語の問題を含み、本来は音楽学者が語るべきものなのですが、今回は演奏家・作曲家という視点からお話ししたいと思います。

さて、本題に入る前に、ひとつ大前提として押さえておかなければならないことがあります。

それは、楽譜は一にも二にも、演奏家をはじめ、楽譜を読んで欲しい人にとって読みやすいものでなければならないということです。

これは、五線や音符など記譜法全般に言えることですが、楽譜は、演奏家などにとって一番馴染みがあるものである必要があります。そうでないと、楽譜を理解する時間・練習時間を浪費してしまうからです。

では、ひとつ目の疑問。なぜイタリア語が主なのか?についてです。

これは中世に近代記譜法が定着した後、演奏家や作曲家の中心地になっていたのがイタリアだったと考えられるからです。楽譜の中に強弱記号や速度表示がしばしば現れるようになったモーツァルトの時代も、音楽の中心地はイタリアにありました。
その習慣を受け継ぎ、ロマン派までの音楽は、そのほとんどがイタリア語によって書かれました。

二つ目の疑問。なぜドイツ語やフランス語も用いられるのか?

ドイツ語での表記は、例えばシューマンやマーラー、あるいはワーグナーあたりからのドイツ語圏の作曲家に見られます。しかし、一概にも言えず、ブラームスにはイタリア語しか見当たりません。

一方、フランス語での表記は、ドビュッシーやラヴェル以降のフランス語圏の作曲家に見られるようになります。

この疑問の本質には、歴史と国民性の問題が大きく横たわっていて、それを深く理解する必要があります。しかし、これらを、ごく単純な構図にしてしまうと、二つのことが言えそうです。

一つは、母国語を使った作曲家は、その言語に矜持を持っていたこと。もう一つは、その楽譜を読んで欲しい人には、それで大体通じたということです。ですので、チャイコフスキーなど国民楽派はイタリア語しか用いませんでした。

そして、これは三つ目の疑問である、なぜ日本語が用いられないのか?ということにも深く関係しています。

日本の西洋音楽の黎明期には、滝廉太郎や山田耕筰といった作曲家がいました。そこから池内友次郎や石桁真礼生、されに武満徹や三善晃と繋がってくるのですが、彼らの楽譜に共通していることがあります。
それは、自国である日本を意識し、こちらに向けて書いた音楽には、実は日本語による楽語(演奏指示)を使用している点です。これは日本歌曲や教育用音楽に顕著です。

しかし、そうではない場合(多くは器楽曲)は、基本的なイタリア語に加えて、それでは表記しきれない演奏指示を彼らが影響を受けた国の言葉(あるいは英語)で表記しています。この場合、基本的に彼らの目はヨーロッパを向いています。

武満徹の楽譜には英語が頻出しますし、三善晃にはフランス語が頻出します。(英語の登場は第二次世界大戦を無視できないと思われます)

しかし、現在生きている作曲家の中には、その楽譜の中に日本語を用いている場合も多く、楽譜の中にイタリア語・英語・日本語など3ヶ国語以上が見受けられる場合があります。

また世界的にも、現代に生きる作曲家は楽譜を(特に解説欄を)、母国語・英語・フランス語など多種の言語で書く場合が多いです。これは日本で近年増えてきた、道路標識の多言語化と全く同じ原理です。

このように、一口に楽語と言っても、非常に奥の深い問題であることがお分り頂けたと思います。

しかし、いずれにせよ、大切なのは初めにお話しした大前提で、なるべく分かりやすく、やさしく、かつ正確に伝わる楽譜が一番良いのです。(宮川慎一郎)

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