シューマン作曲『森の情景』(楽曲分析)

今日は、ドイツ・ロマン主義を代表する作曲家、ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810-1856)のピアノ曲『森の情景』Op.82について、少し詳細な分析を交えてご紹介したいと思います。

『森の情景』は1849年の作。全9曲の小品から成り、シューマンが39歳の時に作曲されました。9曲の様式は様々です。

その中で今日取り上げるのは、第一曲目「森の入り口」です。

「森の入り口」の作品概要は次の通りになっています。

■変ロ長調・4/4拍子・♩=132

■形式の内訳は、

A

B[b(a8)-b10]

A

という3部形式をとっていて、中間部はやや複雑です。(数字は小節数を、aはAの部分モティーフを表します)

この曲は全体的に明るい雰囲気を持っており、とっつきやすい印象がありますが、詳細に見ると一筋縄ではいかない部分が散見されます。

まず冒頭、Aの部分。ここは明快かつ軽快な楽想を持っています。

冒頭のppでは、左手は、概ね2つの音から構成される和音の形を持っており、ホルン風の音色をイメージさせます。これに対して右手は、概ね3つの和音から構成され、軽快で細やかなアーティキュレーションを持ちます。

これが3小節目に入って、ソプラノ声部に明確なメロディ・バス声部に明確な線が登場し、強弱もmfへと変化します。

この2小節目から3小節目は、オーケストラ的な音色変化を想起させると同時に、音楽の持続性に不安定なまでの急速な変化をもたらします。

中間部・Bは先にお話しした通り、やや複雑な形式を持っており、他にも特筆すべき点が多々あります。

Bの特徴の一つ目は、唐突な調的感覚の変化です。

B(9小節目〜)は減7の和音から導入され、ハ短調の終止を迎えますが、その後、変イ長調、変ロ長調と移ります。この間は部分モティーフaを用いていることも助け、転調の移ろいには、さほどの違和感はありません。しかし、問題はその次です。

21小節目でaを用いた変ロ長調の偽終止を経て、これが3度関係の属7和音に移り、さらにハ短調に終始したかと思いきや、その中でドリア旋法風の音(ラのナチュラル)を一瞬挟みます。ラのナチュラルが登場するのは、小節数でいうと24小節目です。

これには一瞬ドキッとします。音を間違っているのではないかと思うほどです。

Bの2つ目の特徴は、ペダル指示です。

Bの最終部分では、Aに再現するための10小節間の保続音(ファの音)・またはAのドミナント的な役割を果たす部分を持ちますが、ここに付されたペダル指示は3~4小節単位と非常に長く、様々な和声が置かれている中にあって、極めて特殊なペダル指示になっています。

この指示通りにペダルと踏むと、かなり濁ります。

しかし、それも作曲上の意図であった可能性は大きいかと思います。

Bの3つ目の特徴は、テノール声部に時々現れる対位的なメロディです。

これがソプラノ声部と複雑に絡み合って発展することはないものの、この曲を立体的に聴かせる一助になっていることは間違いないでしょう。

「森の入り口」は、初心者でも取り組めるようなピアニズムも助け、一見、平易な音楽に思われがちです。しかし、上記のように、その実態は極めて多彩な要素を含んでおり、単純な音楽ではないことが見て取れるのです。

ぜひ、そのようなことも念頭において、取り組んで見てくださったらと思います。

(宮川慎一郎)

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